変身(登場猫物・用語)
明石太郎……この物語の主人公。(目覚めし猫)
朝起きると茶トラ猫になっていたが、持ち前の好奇心と前向きさで、アパートの外に飛び出す。その後トンカツやミケと出会い、現在は寅組を助けるため行動している。
トンカツ……寅組傘下であるどん吉組所属のハチワレ猫。
指令によりミケを探していたが、途中で敵対勢力である丑組の猫たちに襲われてしまう。が、明石太郎の助太刀により事なきを得る。その後、明石太郎を味方にするという大きな仕事を果たす。
戦いが苦手で好きではないが、意外と勇敢だったりする。
どん吉……寅組傘下であるどん吉組の親分。
寅組の幹部でもあり、武力と知力を兼ね備える実力者。寅組の中でも古参であり、虎ノ進親分のおかみさんやミケとも面識がある。現在は、同じく寅組の幹部である蟹丸・ラクレアと共にジャック率いる丑組と交戦中。
大柄で灰色の猫。
虎ノ進(とらのしん)……寅組の親分。
通称〝犬喰いの虎ノ進〟猫の世界では広く名が知られており、彼に惹かれて寅組に加入した猫も少なくない。大きな戦いでは自らが最前線に立ち部下たちを指揮する。
大柄なトラ猫。体はがっちりとした筋肉質である。
ミケ……寅組所属の三毛猫。(目覚めし猫)
唯一、規律厳しい寅組の中で自由を与えられている猫。その実力はいまだ不明だが、寅組の中ではジャックに対抗できる唯一の猫だと言われている。しかし、明石太郎と出会ったときは、戦いにあまり前向きではなかった。
好物は焼き魚。
おかみさん……虎ノ進の妻で現在は亡くなっている。(目覚めし猫)
野犬の群れに襲われていたところを虎ノ進に助けられ、そのことがきっかけで結婚する。そして虎ノ進に恩を返すべく、役立ちそうな人間についての情報を様々伝えた。しかし、野犬に襲われたときの怪我などが原因で結婚した数年後に亡くなった。
牛鬼(ぎゅうき)……現在の丑組の親分。
自己中心的な考えで心の中では常に自分さえよければいいと考えている。
武力はあまりないが、悪知恵と先代の血を引いているという理由で丑組の親分に就任した。
牛柄のぶち猫でかなりの大柄だが、ほとんどが脂肪である。
ジャック……丑組最強の猫。(目覚めし猫)
所属すれば面倒な食糧集めをしなくても、たらふく食事にありつけるという理由で丑組に加入。部下はいるが普段は一匹で勝手に行動しており、様々な地域に行ってはそこらじゅうの猫たちに喧嘩を売り危害を加えている。
神様……人を殺めた人間を猫の姿に変えるという罰を与える猫型の死神。
仙人を猫にしたような話し方や見た目だが、特に罪のない明石太郎を間違えて猫の姿にしてしまうという、いい加減な面も併せ持つ。
真っ白でふわふわもこもこの毛並みは、とても触り心地がよいらしい……
寅組(とらぐみ)……明石太郎が生活する地域一体を支配する二大猫勢力の一つ。
親分である虎ノ進を中心に幹部クラスから下っ端まできっちりと統制がとれた組織。規律を重視しており、基本的に無駄な他勢力との戦いはしない。
また、今は亡きおかみさんのおかげで、人間社会へもうまく対応し勢力を広げていった。
丑組(うしぐみ)……明石太郎が生活する地域一体を支配する二大猫勢力の一つ。
寅組と拮抗していたが、牛鬼が就任してから力が徐々に弱まりはじめる。しかし、組織再建のため行った徴兵政策でジャックが加入したことにより、再び力をつけはじめる。アジト周辺には豊富な食糧や資源があり、それを餌に多くの猫を集めている。兵力の多さでは寅組に大きく差をつけている。
あくどいことも平気で行う。
目覚めし猫(めざめしねこ)……数万匹に一匹の割合で存在するという猫。
特徴として人間社会に詳しかったり、猫では考えられない発想を有していたりする。また、熟練度があるらしく、日を追うごとに力を増すといわれている。実は神様によって猫の姿に変えられた人間である。
それ以外にも知られていない事実が存在する。
終
10
「丑組の件、了解した。お前たちは奴らとの接触を避けながら引き続きミケを探してくれ」
「わかりました」
太陽はすでに西に傾きつつあったが、寅組は依然としてミケの所在を掴めずにいた。無論、どん吉組のミケ捜索班たちも同じであった。
(くそ、ミケのやつどこ行きやがった)
どん吉は焦っていた。
数時間経っても、ボスである虎ノ進親分の指令を達成できていないという理由もあるが、一番は丑組の先鋒隊が寅組の縄張りに進行してきているという通達を、偵察班の部下たちが度々報せに来るからだ。
(とっとと見つけねえと。いっそ縄張りの外まで捜索範囲を広げるか?いや、それだと戦力をさらに捜索班に割くことになる。丑組が攻めてきているというのに、それは危険だ。しかし、このまま続けていても無駄に時間が過ぎるばかり……)
いくら考えてもこれといった打開策は思い浮かばなかった。
そうこうしていると、また一匹の部下がどん吉の元へ走ってきた。
「どん吉さん報告が」
「ん、どうした?ミケが見つかったか?」
「あ、いえ……」
どん吉は表情を少し曇らせた。
「悪い報せか?」
「は、はい。ドングリ野原にて我々寅組と丑組が交戦を始めました。敵の戦力を見るに、今回は少しばかり大きな戦いになりそうです」
「ジャックはいるのか?」
「いえ、ジャックらしき姿は確認できず」
「そうか」
(確かドングリ野原を任されているのは蟹丸だったな。あいつなら援軍は必要ないだろう)
よし、我らは引き続き捜索を……と、伝えようとした刹那。さらにまた別の猫がどん吉の元に走ってきた。
(またか……)
ただ今度の猫はかなり険しい表情をしていた。
(ん?たしかあいつは蟹丸のところの……)
嫌な予感がした。
「どん吉さーん!!!はあ、はあ、大変です。ジャ、ジャックが現れました」
「なんだと!!」
それは考えうる中で最悪の報せだった。
(まさか奴まで来ているとは)
「ドングリ野原か?」
「はい。なので援軍に加わってほしいと蟹丸親分から言伝てを預かってきました」
「援軍!?」
どん吉はその言葉に我が耳を疑った。
「あいつ迎え撃つ気か?」
「はい。そのようです」
「……ばかやろう」
「えっ?」
ふわりと、どん吉の灰色の毛が逆立った。
「ジャックとの戦闘は避けろとの命を忘れたのか!!」
どん吉の怒号でその場の空気がひりついた。
しかし、それでも報せにきた猫は言葉を続けた。
「申し訳ございません!!が、が、しかし。今ジャックは悪魔の爪を装着しておらず、〝俺と近くに陣を張っているラクレア、そしてどん吉の三部隊が合わされば奴を倒せる!〟とのことです」
「………」
どん吉は少しの間沈黙し、思考を巡らせた。
それは甘いきがする……
(ジャックは底が知れない。直接戦ったことはないが、奴の戦闘を見れば分かる。体の大きさ、筋力、俊敏性。そして目覚めし猫だからか、引っ掻きだろうが噛みつきだろうが、こちらがどんな攻撃を仕掛けようが、全ていなされてしまう。恐らく俺たち三部隊だけでは……)
しかし、だからといって行動しないのも違う気がした。
事態は急を要している。
(それに蟹丸の性格なら我々が合流しなくても、ジャックに挑もうとするだろう。あいつをそんなことで失うのはまずい)
「……よし、分かった」
断腸の思いであった。
「我々どん吉組も部隊を整えドングリ野原へ向かう。だから、集まるまでは絶対に戦うなと蟹丸に伝えろ!」
「はい!!ありがとうございます!!」
その猫はドングリ野原の方向へすぐさま駆けていった。
「どん吉さん……ジャックと戦うんですか?」
横で聞いていた部下が尋ねた。
「そうなるかもな」
「……わかりました。では急ぎ各地に散らばったどん吉組に、ドングリ野原に集合するよう伝えてきます」
「頼んだぞ」
「俺は先に向かっている」
「わかりました。では、後程!」
「ああ」
間違った選択をしている………気がする。
それにミケだってまだ見つかっていないというのに……
しかし、そんなことを考えても詮無きこと。今は急ぐしかない。
そうしてどん吉はドングリ野原へ駆けていった。
おまけ1
お嬢様、今回もご覧いただき誠にありがとうございます。
毎回、そろそろ終わりが近づいてきたかな?と思うのですが、書きはじめると、どうも話が膨らんで中々完結に辿り着けません。これが良いことなのか悪いことなのかは分かりませんが、妥協せずに一歩一歩、完結へと進む所存でございます。なので、ごゆるりとお待ちいただければ幸いでございます。
おまけ2
最近とても良いことがございました。
私が一番応援しているサッカーの〝鎌田大地選手〟が、とある大会で優勝を果たしたのです。
それはイギリスの〝FAカップ〟と呼ばれるものでございます。
最も歴史があるサッカーの大会としても知られ、決勝戦にはイギリスの王族が観戦するという慣例があるほどでございます。(ちなみに鎌田選手はウィリアム皇太子と握手をし、メダルをかけてもらっておりました)
また、鎌田選手が所属し、今回優勝した〝クリスタル・パレスFC〟は1861年に創設されて以来、初めての主要タイトルでございました。
恐らく、ファンの方々からは永遠に忘れられることのない日本人選手になることでしょう。
そしてサッカーの話題をもう一つ。来年はワールドカップイヤーでございます!開幕戦は2026年6月11日予定、つまり約一年後でございます。なので、来年の今頃には、私は変身を書き終え、ワールドカップのブログをきっと書いていることでしょう!
ではお嬢様、次回のブログでまたお会いいたしましょう!
終わり。