8月。私の好みを反映したジュレをご用意できることになりました。
最初にひと言お伝えしたいのですが。
「と っ て も お い し い で す !!」
誰が作ったのか、どんな想いや物語が込められているのか、そんな要素は些細であり、意味を持たない。
言葉は必要ありません。
お嬢様の洗練された感性であれば、すべておわかりいただけるはずです。
ただ、あえて付け加えるのなら。
(ここからが本題で長いのですが)
もしお手にとっていただけたなら。
口に含む前に、まずはお顔を近づけてその香りをお楽しみください。
誠に艶やかな、部屋中を満たしたいと思えるようなしっとりとした香りをお楽しみいただけるはずです。
そして、食感も重層的で心地よいリズムを感じさせます。
まず、舌の上で溶けるジュレ、それとともに広がるヴェルモットとハーブの香り。
グレープフルーツは大きな房を崩さず入れておりますので、肉厚で瑞々しい食感を楽しめます。
そして、散りばめたピンクペッパー。
噛み砕くと口いっぱいに広がる、スパイシーで華やかな香り。
私の技量では筆舌に尽くし難く、
至福という言葉以外はみつかりません。
海を思わせるお酒ヴェルモット、そして地中海のハーブ。
弾ける柑橘とピンクペッパーの味わい。
そこにあるのは潮風、熱、瑞々しさだけではなく、晩夏の夕暮れ、気怠い夕辺。
海を望む庭園、ハーブが生茂る中で、虫の音を聞きながらグラスを傾ける時間です。
旅行もままならない日々ですが、お心だけでも地中海へ馳せてください。
ちなみに本来は
有名な絵画から名前をとり
「庭園での語らい」
という名前のデザートにしたかったのですが、的場に却下されてこのような名前になりました。
「大河内はん。そんなけったいな名前じゃあ、なーーーんも伝わらへんやで、冗談はヒゲだけにしたってぇ!ほなさいなら」
こんなことを言われた気がします。
最後になりましたが、私の我儘を形にしてくれた当家のパティシエにも感謝の言葉を。
いつもありがとうございます。