人鳥哀歌

小さい頃からペンギンが好きでした。
なんでこんなにも可愛い生き物がいるんだ、と。
歩き方の一つとっても、というよりかどの仕草を切り取っても可愛さの権化。
白黒のコントラスト。
魅力は尽きません。


今でも思い出します。

確かどこかの動物園。
小さな手でガラスに張り付きながら眺める向こう側には、
泳ぎながらそのクチバシでガラスを突きながらずっとこちらに向かって来ようとするペンギンが居ます。

ずっと目が合っています。

「ここからでたいの?」

投げかけた質問には応える素振りもなく、
引き続き泳ぎながらガラスを突いてきます。

「きみはなにをしてるの?」

ずっと目が合っています。

コンコンコン。

…結局最後はガラスの向こう側からのクチバシによる3回ノックという謎を置いたままどこかに泳いで行ってしまいました。

「どういうことなんだ」

子供ながらにしてその不思議な魅力に取り憑かれた私は、
気づいたらペンギンの虜に。

帰り際に買ってもらった小さなペンギンのぬいぐるみは、
何故かソフトクリームまみれになるという些細な出来事もありましたが、
まあ、それはいいでしょう。
ちなみに3回ノックはマナーとして大変よろしいらしいです。
ご丁寧に有り難いことでございます。



鳥として生まれながら、
空を飛ぶ事を知らず、
与えられたその翼で、
生きるためその海を泳ぐ。

羽を伸ばしては海に潜るのはきっと、
いつかあの青い空を泳ぐ時のための練習。

信じていればいずれ夢は叶うと淡く願いながら、
月に向けて鳴く。

羽を広げて飛ぶ事をいつの日か忘れてしまった私達は、
空飛ぶペンギンスクワッド。


櫛方
Filed under: 櫛方 — 22:00