走れ明石3

役所入口
明「やっと着いたか、急がなければ」
19時15分を刻んだ時計を横目に、受付カウンターへ走っていった。
明「すみません。〇〇アパートか〇〇さんの名前で、多目的ホールなどの予約ありませんでしたか?」
受付の女性「!!!」「あなた何て恰好してるのですか!破廉恥極まりない!」
明「そんなことはどうでもいい!時間がない、早くしないと取り返しのつかないことになってしまう!」
受付の女性「〇〇様なら3階の中央ホールを只今ご利用中ですが、、」「あなた、その恰好では中へ通しませんよ!」
明「3階だな!」
受付の女性「ちょ、ちょっと!待ちなさい!」
その声を余所に明石太郎は走り出した。

 階段を上り、周りを見渡すと(中央ホール入口)の文字を見つけた。
明「はぁはぁ、中央ホールはあれか!」
明石太郎は入口まで駆け寄ると、扉を勢いよく開け放った。

明「大家!!!」

住民達「!?!?」
大「あれー、明石君ではないですか。今更どうしたのです?もう署名は終わりましたよ(笑)」
弁「あれが例の住民ですか。あの恰好、噂にたがわぬ阿呆のようだ(笑)」
住民達「明石くん、、、」
明「………」
明石太郎は無言で二人に近づいた。

弁「丁度いい、君も署名してください、、、ああそれと明石君の書類を見せていただきましたが、ここ数年にわたる数々の規約違反。騒音問題、ペット問題。最近では銃刀法違反で警察の方々にもご迷惑をかけたとか、、、」「まさか断るとは思いませんが、その時は分かりますよねぇ?」「早く署名したほうが身のためですよ。今だって公然猥褻で罪を重ねてるんですから(笑)」
大&弁「さあ早く!」
明「………」

役所受付
受付の女性「本当なんです!全裸の男が3階へ上がっていったんです!」
受付の男性「、、、はぁ。何かの見間違いではないですか?」
受付の女性「そんなことありません!この目で見たんですから!!」
???「あの、すみません」
受付二人「!?」

受付の女性「は、はい。なんでしょうか?」
???「全裸の紳士を見掛けませんでしたか?」
受付の女性「えっ?」「まさかお知合いですか!?」
???「はい。友人です」男は自信を持って答えた。

受付の女性「ぜ、全裸の阿保ならここへ来た後、3階の中央ホールへ行きましたよ」
???「ありがとうございます」男は速足で3階へ向かった。

受付の女性「ほら!言ったじゃない!私たちも行きましょう!」
受付の男性「そ、そうだな」

                   中央ホール

          ”バチーーン!!”ホール内にビンタの音が鳴り響いた。

 弁護士は頬に真っ赤な紅葉を咲かせ、気絶した。
住民達「!?!?」
大「な、なにをしているのだ!」
明「やかましいわ!!!」
大「!?!?」

明「家賃の問題に今までの悪政。住民や私を馬鹿にしたこと。おまけに不良達に殴られるわ、婦女子に裸を見られるわ、今日は散々な一日だ!」「それもこれも全て貴様のせいだ!覚悟しろっ!!」
大「ちょ、ちょっと待て!暴力的な解決は何も生まないぞ」「そ、それに半分くらい私には関係ないじゃないか!?」
明「うるさい!必殺の往復ビンタにて、貴様に天誅を下したる!!」
大「待て!落ち着け!!!」
明「もう遅い!!」
 明石太郎の怒りのビンタは左右に、そして上下に往復し、色々な角度から大家の顔をはたき、数分後には顔が3倍もの大きさに膨れ上がった。

???「あちゃー。平和的解決策を持ってきたのだが、少し遅かったか」
???「明石君、そのくらいで許してやりな」明石太郎は無我夢中ではたいていたが、その声でふと我に返った。

明「染瀬じゃないか!来たのか」明石太郎は手を止めて、染瀬の方へ振り向いた。
染「ああ!これを渡すのをすっかり忘れててね」
明「なんだいそれは?」
染「これは今までの悪政の契約書さ。注意深く見直してみると法律的にグレーな一文が結構あってさ。全部この弁護士が関わっているなら、悪逆を暴く良い証拠になるよ」「それとこの前のファミレスの会話を録画したテープ。平和的解決を望むならこういった物も役に立つからね」「まぁ今回は大家さんの方が早く欲しかったかもしれないね」
明「ふん!たまには痛い目に合った方がいいんだ」

染「何にせよこれで一件落着だ。この証拠を突きつければ住民達の家賃も元通りにしてくれるだろう」
明「よかったな、みんな!」
住民達「二人ともありがとう」「良かったー!」「やっぱ頼りになるなぁ」
染「でも、なにか忘れてるような、、、」

          ”バチーーン!!!”ホール内にまたビンタの音が鳴り響いた。

「この変態!!」
 声と共に明石太郎の頬に衝撃が走り、勢いよく転倒した。
明「ぐはっ、、なんだ一体!?」明石太郎がゆっくり起き上がると、見たことのある女性が軽蔑の表情でこちらを見ていた。

明「ハッ!」「ま、待て!落ち着くのだ!!!」
受付女性「もう遅い!貴様に天誅を下す!!!!!」
染「明石君、取り合えず僕の上着で下半身を隠せ!さもなければ今度は君が痛い目にあうぞ!」

 アパートのヒーローは改めて自分の姿を見直すと、その阿呆な姿にひどく赤面した。

                     完

お嬢様、お坊ちゃま、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
まさか3回に分けて掲載するとは思ってもいませんでした。
やはり文章というのは難しいものですね。

それと最後に、、、、

            太宰治先生、申し訳ございませんでした!!!

終わり。