年末も終わり。

お嬢様、お坊ちゃま。
ご機嫌麗しゅうございます。
的場でございます。

もう間もなく2021年が終わろうとしております。
お屋敷から少し離れた山小屋からお送りしております。
今年一年の事を思い出しておりました。

1月の事から思い出しておりますと、
「あれがまだ今年の事なのか!」と一年の事を長く感じる事もございます。
反面、私がギフトショップに降り立ってからはや5年半…!
ギフトショップでの日々を短く感じる事もございます。
あっと言う間にただ老いていかぬ様、一日一日を大切に過ごしてゆきとうございますね。

毎年年末に感じる事ではございますが、
「激動の一年だった!これ以上はない」と思う気持ちと、それ以上に
「もっと何かできる事はないか」「お嬢様、お坊ちゃまにもっと驚きと喜びを」
という気持ちが沸いて出てまいります。

それは私一人の力で成し得る事ではございません。
周りの使用人達が力を貸してくれております。

明石の鬼才が発揮されたのも今年からでございますね。
ギフトショップのブログを皮切りに、フットマンスイーツや的場の山小屋CDでも赤井と共にその才能を如何なく花開かせておりました。
カウントダウンでも何と…いや、これはまだお話できる内容ではございませんね。
今夜を楽しみにお待ち下さいませ。

また今年は桐島、才木と共にお写真や動画の企画を進めてまいりました。
お楽しみいただけましたでしょうか?
2022年も更なるチャレンジの可能性を秘めているのではないかと考えております。
もっと彼らと遊びたい!お嬢様、お坊ちゃまにもお楽しみいただきたい!
という気持ちでございます。

能見、八幡と「燕たちの井戸端会議」を行っておりますが、
こちらもまだまだお嬢様、お坊ちゃまのお力が必要でございます!
「これがあったら喜ぶよ!」というご意見がございましたら
是非ともご参考にさせていただきとう存じます。
来年はもっと話題の幅を広げ、配信の間隔も縮めていく事ができたらなあ、と考えております。

本年もたくさんお足を運んでいただき、誠にありがとうございました。
個性豊かな使用人達と楽しいお屋敷を作っていければ!と存じておりますので、
2022も一年間何卒よろしくお願い申し上げます。

…それと2022年1月からは的場の美味しいハヤシライスのクレープのご用意がございますので、ギフトショップにてお待ち申し上げております!

それでは本年はこれにて。

今年も終わり

いかがお過ごしでございますか。桐島でございます。

今年一年いかがでございましたか。

私はと言いますとティーサロンとギフトショップの行き来がより多かった一年でございました。

そして富田との関係も非常に良好になった気がいたします。

最近富田はチュールを喜んで食べておりまして本日もがっついておりました。

その様子がこちら。

はい、もう食の亡者でございますね。

来年も沢山の富田の様子をご紹介致しますのでどうぞよろしくお願い致します。

クリスマス2

12月25日、午前一時。街中の仲睦まじきカップルたちもどこかに消え、普段の静かな街並みに移り変わったころ、あのアパートで行われている交流会は逆に白熱さを増していた。
 
今回のメインテーマは”トーク”「面白い話」「怪談」「体験談」などジャンルは問わず、とにかく一人一人盛り上がる話を用意し、お酒を飲みながら誰の話が一番盛り上がったかを決める催しとなっていた。ちなみに今話しているのはあの大家だった。

 彼は顔から陰湿な雰囲気が滲み出ており、それに恥じぬ「人の悪口」と、大家という職権を乱用した「住人の暴露話」を十八番としていた。そんな最低最悪の彼だったが、今まで明石太郎や染瀬清一以外の住民を騙くらかしていただけのことはあり、悔しくもその軽妙な話術はどこか引き込まれる所があった。そして明石太郎の「クリスマスカースト最底辺でもええじゃないか」よりも盛り上がっていた。

明石「くそっ!なんで私の面白話よりも、あんな奴の悪口が盛り上がるんだ」
染瀬「まあ人間なんてそんなものさ」
大家「残念だったな明石君。君とは話術の差がありすぎたようだ(笑)」「それに君のトーク内容はよろしくないな、どこに恋愛最底辺で満足する者がいる。皆モテたいに決まっているじゃないか。共感が出来ないんだよ、共感が」
明石「うけたからっていい気になりよって」

大家「あ、そういえば染瀬君、君には期待しているよ。君の恋バナは私も一目置いているのだから」
明石「もう勝った気でいるな」「染瀬!君の必殺話でケチョンケチョンにしてやれ!」
染瀬「ケチョンケチョンって、趣旨が変わっている気がするが、、」「まあいいや、じゃあそろそろ僕が話しますか」

住民達「おっ染瀬君の番か?」「待ってました!」「いや、楽しみだな~」
大家「ではお手並み拝見といこうか」
明石「いけ!染瀬!」

染瀬「では。あれは僕がまだ小学6年生だったころ、、、」

                   ○○年前
(小学校の教室)

国語の先生「この”夢を見ているようだ”という表現は男の子ではなく、そのお母さんの気持ちを表しており、つまりそれは、、、」”キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン”
生徒「おっ休み時間だ!」
先生「もうこんな時間か」「では今日はここまでにしますが、来週はテストがあるので120P~127Pまでしっかり復習しておくように」
生徒達「はーい」「皆サッカー行こうぜ!」「行こう、行こう」
 この時はクリスマス前で寒い冬の時期だったが、皆シャツ一枚で外で遊んでいた。今思うと信じられないことだ。

生徒達「染瀬も行こうぜ」
染瀬「すまないが、僕は今度のクリスマスに向けて重要な作戦を立てなければならない。なので皆だけで遊んできてくれ」
生徒達「えー、ノリ悪!」「次やる時はキーパースタートだからな!」
染瀬「わかった、わかった」当時僕はサンタさんの正体を掴みかけていた。

染瀬「やはりおかしい。去年も一昨年も欲しい物が的確にプレゼントされている。それにクラスメイト全員に聞いてみても9割は欲しい物だった。確かにサンタさんはすごい人なのだろう、しかしそんなことはあり得るのだろうか。そして一番おかしいのは、サンタさんが僕の欲しい物を知るのは僕の枕元に置いてあるメッセージカードを見てからのはず」

染瀬「ということはサンタさんは”家に着く→メッセージカードを見る→家を出てプレゼントを買ってくる→もう一回来てプレゼントを置く”ということになる、そんなことを一晩で全員にやっているなど不可能だ」「それにそれだとまた別の疑問がでてくる。サンタさんが来るのは早くても時計の針が24時を過ぎたあとのはず、そんな時間に開いているデパートは無いはずだ」

染瀬「つまり考えられるのは事前に僕が欲しい物を知っている、それしかない。ではいつ知ったか、まだ書いてもいないメッセージカードを読むなど不可能。僕の行動を監視していて欲しい物を推測しているにはプレゼントが的確すぎる。去年の合体ロボの欲しかった”色”まで当てたのが良い例だ。とすれば誰かに聞いているのか、、、一体誰に」「僕が欲しい物の細かいところまで話し合うのは友達だがそれは無い。それだとサンタが僕に友達の欲しい物を聞きに来ているはずだ」「あとはお母さんくらいだが、、、ま、まさか!」

染瀬「いやそんなはずは、、しかし毎年クリスマスが近づくと(清一、サンタさんから何貰うか決めたの?)とか聞いてきた気がする」「まずい、僕は実の母親を疑い始めている。これは何とかお母さんの疑念を払拭するため、策を討たねば、、、、こ、これしかない」

染瀬「まず、お母さんが(何を貰うの?)と聞いてきたらお母さんにしか言わない嘘のプレゼントを言う。そしてクリスマスイヴに誰にも見られないようにメッセージカードに本当に欲しい物を書く。これでどちらのプレゼントが置いてあるかによって、お母さんが白か黒か分かるはずだ」「これは誰にも言ってはならない、友達にも先生にも勿論家族にも、絶対に絶対にぜっt」とその時、染瀬の肩を誰かが叩いた。
「ねぇ、染瀬君。何してるの?」
染瀬「うわっ!!!!!!」「びっくりした、根宮さんか。脅かさないでくれ、、」
 
 根宮にか子(ねみや にかこ)は僕と同じクラスの女の子だった。彼女はどちらかというと静かめのグループに属しており、男子とも沢山しゃべるタイプではなかったが、なぜか僕には良く話しかけてきた。多分一学期の頃、席が隣だったからだろう。

根宮「今、お母さんがどうとかこうとか言ってたけど、何のこと?」
染瀬「なに!?聞いていたのか?」「あ、あれは何でもないさ、、、忘れてくれ」
根宮「教えてくれないと、学校でお母さんお母さん言っていたの皆に話しちゃうよ」
染瀬(それはまずい。根宮さんがどこまで聞いていたかは知らないが、もしそれが友達や先生の耳にまで届いたら計画が台無しになってしまう)
染瀬「わ、わかったよ。ただし誰にも秘密を洩らさないと誓えるかい?」
根宮「うん!」

染瀬「よし」「実はね」
根宮「うんうん」
染瀬「僕はサンタさんの秘密を暴いたかもしれない」
根宮「えっ?秘密って?」
染瀬「サンタさんはもしかしたらプレゼントを僕たちの親に聞いているかもしれない、、、」
根宮「、、、それだけ?」
染瀬「!!!」「それだけって、これは世紀の大発見かもしれないんだよ!根宮さんだってサンタさんがどうやってプレゼントを配っているか気になるだろう!?」
根宮「気になるって、、そんなの知ってるよ!というかお母さんがサンタさんじゃない!」

染瀬「、、、、、へ?」(そ、そんなばかな、、でもお母さんがサンタさんだとすると、僕の理論と辻褄が完璧に合致する。というかそれしかない。なぜこんなことに気づかなかったのか)
染瀬「ね、根宮さんはそれをどこで知ったのだ?」「僕みたいに策を立てたのか?」
根宮「そんなことしないよ、普通にお母さんが教えてくれた」「小学校4年生くらいだったかな、お母さんが(今年は何か欲しい物ある?)って、誕生日でもないのに聞いてきたから」「何で?って聞いたら(クリスマスのプレゼントよ)って、それでわかったの」

染瀬「そんな前から」「じゃ、じゃあなぜこの前、根宮さんにプレゼントのことを尋ねた時、教えてくれなかったのさ?」
根宮「だってその時、染瀬君に(根宮さんは去年のクリスマスプレゼントは欲しい物だった?)としか聞かれなかったから、それにこの年でサンタさんの正体を知らない方が珍しいと思うよ」
染瀬「うっ、、本当か?」(いやだとしても僕が実際に確かめてみないと、、)とその時、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。「キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン」

根宮「染瀬君」
染瀬(まずは先ほどの策を実行に移すべきだ、そしてその結果次第では、、、)
根宮「染瀬君!!」
染瀬「えっ!?な、なにさ」
根宮「話したいことがあるから、放課後帰らないでね」
染瀬「え?あ、ああ、わかったわかった」(策の見直しなども、考えるべきか、、、やることは山積みだな)
根宮「、、、、」

(そして学校が終わり、下校途中)

染瀬(まずは嘘のプレゼントを何にするかだが、、)
「ぽこっ!!」なにかが染瀬の頭をチョップした。
染瀬「いてっ!な、なんだ!?」
??「なんだじゃないよ!」
染瀬「あっまた根宮さんか、いきなり酷いじゃないか」
根宮「それはこっちのセリフよ!」「”帰らないでね”って、言ったじゃん」
染瀬「え?そうだっけ?」
根宮「ひどい!!」
「ぽこっっ!!!」先ほどよりも強い力で染瀬の頭をチョップした。
染瀬「いたっ、ご、ごめんて、謝るからさ」「そ、そういえば何か話したいことが、あったんじゃなかったっけ?」
根宮「、、、そう」
染瀬「教えてよ」
根宮「やだ!」「、、、」「やだけど、、、話す」

染瀬(取り合えず助かった、、)「それでどんな話なの?」
根宮「え、えーと、、、」
染瀬「、、、」「えーと、、、何?」
根宮「こ、今度の日曜日のクリスマス、、」
染瀬「うん」
根宮「い、いっしょにえい、、えい、、、が」
染瀬「えい?」
根宮「え、映画、、見に行かない、、?」

染瀬「、、、え?」(ど、どういうことだ。これは友達としてか、、いや、それにしてはいつもと雰囲気が違う。男子と話すのは苦手そうではあるが、少なくとも僕に対してこんなに動揺はしないはずだ)(というと、まさかこれは、、、恋愛感情としてなのか!?)
根宮「、、、」
染瀬(まずい、こっちの答えを待っている)(どうしよう。実際のところすごく嬉しいのだが、いかんせんデートなどしたことないし、、、早く答えなければ)
根宮「、、、」
染瀬(あれていうか根宮さんてこんな顔してたっけ?今までちゃんと顔を見ていなかった気がする。よく見るとなんていうか、、すごく可愛いかもしれない)

根宮「、、、」
染瀬(何か根宮さん顔が赤くないか、、、うっ、なんかこっちまで顔が熱くなってきた、、クラスの女の子と友達として話すのは何にも動揺しないが、こういうパターンは初めてだ)
根宮「、、、」
染瀬(でもきっと根宮さんは僕以上に緊張して僕に思いを伝えてくれたはずだ。ここで答えられなければ男じゃない!)

染瀬「ね、根宮さん」
根宮「、、、」

染瀬「伝えてくれて、、ありがとう」
根宮「、、、うん」

染瀬「映画、、、一緒に行こう!」
根宮「、、、うん!」

その時僕は、あれほど考えていたサンタさんのことなど、すっかり忘れていた。

おわり。

                   アパート

住民達「え!!終わり!?」「デートはどうだったんだ!」「教えてくれよ染瀬君!」
染瀬「デートはしたさ。ただ、まぁそのあとにね、、、」
住民達「そのあとだよ、そのあとを知りたいんだよ!」

大家「うるさいぞ!お前たち!!」
住民達「びくっ!!」
大家「わからんのか!?染瀬がここで話を切り上げた真意が!この後、、染瀬は、、染瀬は、、恋に、恋にやぶれたのさ、、、」「思い出くらい良い所で終わらせてやろうぜ!」「なあ明石、お前もそう思うだろ?」
明石「てか、あんたそんなキャラだったっけ、、?」「ていうか意外だったな染瀬、根宮さんとそんな関係だったとは」
染瀬「黙ってて悪かったね」

住民達&大家「、、、え!?」「君達同じ小学校だったの??」
明石「あれ、言ってなかったっけ?」「いや~懐かしいな、あと二人仲が良かった友達がいてさ、四バカ兄弟なんて言われてたな」
染瀬「いや僕はそこには入っていないはずさ、明石君達三人で三バカ兄弟だったはずだ」
明石「あれ、そうだっけ?」「まあいいや、そういえば根宮さんて三学期の頃あまり学校に来なかったよね?」
染瀬「、、、ああ。それは僕が原因さ」
明石「そうだったのか、まあ話したくなさそうだし聞かないけどさ」

住民達&大家「おい!お前たちだけで完結するな!」「俺たちにも教えろ!」

染瀬「まぁ、機会があればね」

                     完

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

恋のお話を書くにはどうやら、まだまだ勉強が必要そうです。また機会があれば挑戦するかもしれません。

それと最後にお嬢様、お坊ちゃま、良いお年をお迎えくださいませ。

今年も終わり

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

winter fairも始まって久しく、
お配りする写真も後半へと切り替わりました。
いよいよ今年も終わりという感覚を
ひしひしと感じるところですが、
皆様フォトブックはご覧頂けたでしょうか。

今回は的場と桐島と共に
趣向を凝らしたクリスマスフォトブック。
テーマは「日常」「アンニュイ」といったところで、
楽しげなパーティーと言うよりは、
クールな、
普段はあまりお見せすることのない
使用人達の姿を楽しんでいただけるよう
お作りいたしました。

特典のDVDでは、
使用人達が「クリスマスの思い出」を
語っております。
私と的場で再びインタビュアーを務めまして、
和気あいあいとした内容になってございます。

また大旦那様からお許し頂き、
私と的場のこぼれ話的な
対談ページも収録してございます。
来年に向けて様々なことを計画しておりますが、
まずはこちらをお楽しみ頂けますと幸いです。

今年はヴァンドゥールとしてお仕えを始め、
近頃はあまりギフトショップで
お会いすることは叶いませんが、お声が掛かれば、
いつでも皆様にお仕え出来るよう、
日々勉強しております。

またギフトショップにおいても、
お戻りをお待ちしております。
来年もよろしくお願いいたします。

……

八幡のクレープボックスも、
大変美味しゅうございます。
是非お召し上がりくださいませ。

才木

クリスマス

12月中旬、街は色とりどりなイルミネーションに彩られていた。それに引き寄せられるように辺りにはプラトニックな男女が溢れ、寒風吹きすさぶ冷たい季節に、安らぎの温かさをもたらしていた。

 そんなクリスマスシーズンに期待を寄せる町や人々を余所に、「我、浮いた催しには一切関せず」といった面持ちのアパートが町外れに建っていた。ごつごつとした錆びれた外壁には部屋の窓ガラスが等間隔に設置されており、全ての窓が色あせたカーテンで閉め切っていた。それは多分ここの住人も、このアパートに相応しい、孤独に打ち勝てるもののふしかいないのだろうと一目で感じさせた。ちなみに明石太郎(あかし たろう)もその一人である。

 そんな女っ気が一切無いアパートだが、うっすらと華やかな雰囲気に包まれる時が2つある。

 まず一つ。この辺りには素行の悪い野良猫が多く、近辺のお店の魚を盗んだり、ゴミを漁り散らかしたり、一昼夜喧嘩したりと、この地域の住人たちを困らせていた。そして何故だかは分からないが、偶にアパートの前に多くの野良猫が集まる時がある。そしてニャンニャンゴロゴロと、まるで皆で論争しているかのように鳴きだすのだ。

 住人たちには迷惑な話だったが、その猫たちに興味を惹かれた人々がいた。通行人の女性と子供である。どうやら猫たちがしゃべるように鳴いている姿に心を奪われたらしい。そして誰かが猫に近づこうとすると決まって猫たちは「シャー!!」と威嚇する。しかし彼女たちには全くの逆効果だった。より一層猫をもふもふしたい衝動に駆られ、最終的に猫たちは逃げるか、されるがままにもふもふの刑に処されるのだった。

 それでも猫たちは定期的に集会をし、さらに多くの女性と子供を魅了した。初めはアパートの住民たちは迷惑がっていたが、女性、子供、猫という錆びれたアパートに訪れるひと時のオアシスに惹かれ、散歩をするフリをして見にいった。ほとんどの者が実際は「女性と話したい」という理由だったが、誰一人として歴史的一歩を踏み出せずにいた。少し話が逸れてしまったがこれが一つ目だ。そして二つ目は染瀬清一(ぬりせ しょういち)の存在である。

 
 その日、染瀬清一はこたつでぬくぬくしながら感慨に耽っていた。
「今年もあっという間だったなぁ。しかしこの一年も色々なことがあった」「とりわけ思い出すのが明石君と大家さんとの家賃戦争だな」

 染瀬清一。好きな言葉は「和を以て貴しとなす」彼はすらっとした細めの体型で争いを好まず、人当たりの良さが体中から醸し出されていた。さらに至誠な眼の奥には知的な脳みそが隠れており、先の家賃戦争では、明石太郎の大立ち回りの裏で的確なサポートを施していた。

 ”どんどん”突然、染瀬の住む102号室の扉が叩かれた。
「おーい染瀬、いるかい?」今度は扉の向こうから屈託のない声が聞こえてきた。
「鍵は開いているよー」染瀬がそう言うと、満面の笑みの明石太郎が入ってきた。
「おっ!こたつかい?いいねぇ、私にくれよ」
「残念ながらそれは出来ない相談だ。このこたつは僕が知る限り最もぬくいこたつだからね」「まぁ温まりに来るのはいつでも歓迎するよ」「それより明石君、君の表情から察するに、また何か面白いことでも見つけてきたのかい?」
「そうだった!今年最後の交流会の日時が決まった。是非、染瀬にも参加してほしい」
 このアパートでは年に数回、住民同士の交流会が行われていた。お酒を飲みながら談笑したり、時には麻雀や、鍋をつついたりしていた。最近では改心したアパートの大家さんも参加していた。

「勿論参加するよ。で、日時は?」
「12月24日、23時から」
「クリスマスイブじゃないか。今年も皆、浮いた話はないらしいな」
「あたりまえだ!我々をなめるなよ!」
「いや、自信満々に言われても、、」
「だから今回も染瀬の”必殺話”を皆期待している!」
「分かった、楽しみにしていてくれ!」そう、この染瀬の”必殺話”こそが前述の二つ目であった。

 染瀬清一の良き人柄は少年時代から発揮されていた。それは男友達だけでなく女の子からも評判で、それが時に恋愛感情に進展することもあった。つまり染瀬清一は今でこそ特別な人はいないが、このアパートでは珍しい、人並みに恋愛経験がある男だった。
 そして皆が熱望している”必殺話”とはその体験談を語るいわゆる”恋バナ”であった。

「では染瀬よ、詳しいことが決まり次第また報告しに来るから首を洗って待っていたまえ」そう言うと明石太郎は去っていった。

前編完

※ちなみに、ぬりせの「ぬり」に「塗」ではなく「染」という漢字を使っているのは、私が漢字の読み方を勘違いしていたから、というのはここだけの話です。

終わり。

カウントダウン先生。

お嬢様、ご機嫌麗しゅうございます。
カウントダウンのお知らせが発表されましたね。
早くお目にかけたくて仕方のうございます!

あまり詳しくはお話できませんが、
今年は新しい事にチャレンジして
かなり練習を重ねております。

内容は申し上げられませんが、
誰と出し物の練習をしたかを少しだけお伝え致します。

その使用人は何と古谷でございます!!

古谷と的場…
少し意外な組み合わせではございませんか?
古谷とは対等に何かを練習したという事ではございません。
古谷先生に私が様々な事を学びつつ練習致しました。

古谷は執事歌劇団に入ってからというもの、自身が学んだ事をとても大切に積み重ねておりました。
最近の事は勿論、昔の事も学びたての様に覚えており、とても丁寧に教えてくれております。
ずっと一人で練習している姿は度々見かけておりましたが、一度教わった事を何回も大事に反芻していたのでしょうね。

そして教え方も非常に優しい!
古谷先生が褒めて伸ばすタイプだとは…。
(いや、別に厳しい冷たいイメージがあった訳ではございませんが)
何となくクールな印象だったので、少々感動した様なリアクションと共に
「すごく上手になりましたね!」
と言ってくれる古谷は新鮮でございました。

会話をする時に緊張するのか照れくさいのか、あまりしっかり目が合わないところもチャームポイントでございます。
一つ一つ言葉を慎重に選びながら教えてくれる姿も、舞台に上がっている時とは違ってギャップがございました。

カウントダウンは毎年お嬢様に楽しいものをお届けする為に邁進してはおりますが、
今年、私にとっては思いのほか使用人の新たな魅力を感じる事ができた良い年末になりました。
あまり詳しい事をお伝えできないのはもどかしゅうございますが、年末の使用人達の宴を是非!
楽しみにお待ち下さいませ。