日向と日陰

たくさんの仲間を見送りました。とうとう君も先に旅立ってしまうのかと、今までの日々に思いを巡らせております。

あまり知らぬお嬢様方も多いと存じますが、私、1人だけ勉強を共にした同期がおりました。
それが日向でございます。

一緒に勉強を重ねると、彼が御屋敷に来るまでに学んでいたことと、この御屋敷での学ぶべきこととは、大きく差があることに気づきました。

しかし、同時に、不器用ながらも職人的スキルは抜群、それだけでなく、ひとつの事をコツコツと誰よりも磨く精神力は屋敷一だと言うことに気づきました。それはその頃、私達に屋敷の様々な事を教えてくれていた先輩方も同じだったようです。

こうして、学ぶことは違えど羽瀬と日向は勉強を重ね、お嬢様方にお仕えする事が適うようになったのです。

彼が大旦那様より頂戴した名前、それは『日向』。

何故、お嬢様に直接顔を見せない、むしろ日陰の彼が、日向という名前なのか。

それは彼の紅茶係としての姿勢にあったのだと、私は思います。

お嬢様方が日向の顔を知らぬように、日向もお嬢様方の顔を知らぬのです。
ですが、何度もお戻りいただいて、日向の紅茶の感想を頂戴し、それを伝えると、彼は名前を聞き、どんな紅茶を多く飲まれるか覚え、お嬢様方へもっと美味しいお茶をお淹れしようと、また努力するのです。

まさしく陽光のようでございます。
太陽は地球の人々の顔など知らない。
それでも暖かく我々を包み込んでくれる。

彼の仕事はその名にピッタリでございました。

個人的な話では、アルセードを美味しく淹れるために、私に正解の味を何度も聞いてきたこともございました。
紅茶を淹れることに関しては私以上の知識でしたから、私からは何がどう違うのか細かくわからず、『これが一番美味しいからこれで正解だよ笑』という、身も蓋もない返答をした思い出もございますね笑

もう彼のアルセード、飲めなくなってしまうんですね。

…….いえ、悲しみません。

彼が見えないところからお嬢様方を照らせるのなら、私にはもっとできることがあるはずです。
例え星の彼方に旅立とうとも、同じ太陽を眺めることが出来る。

いってらっしゃい。
いつでも戻ってきて、また美味しいお茶を淹れてくださいね。

唯一の学友、羽瀬