サンジョベーゼ・グロッソ。つまりブルネッロというブドウが持っている
頑強さ、厳しい酸とタンニン。
その個性とひたすら丁寧に向き合い、その中にある美しさと純粋さを引き出したのがビオンディ・サンティでしょう。
このブドウの限界のひとつを表現していると断言できます。
クラシカルなワインで「飲む7時間前に開けるのが作法」などといわれるのですが
実際今回も正体が見え始めたのは4時間経ったあたり。
そして24時間後に完全に開いた状態だったのですが、その様子は素晴らしいの一言です。
私も久しぶりに飲んだのですがあまりの美しさに驚かされました。
瑞々しいバラ、酸味のあるチェリー、柴梅、タバコ、レザー、鉄、血、チョコレート、
香りの量がすさまじく、次々と違う表情を見せることは当然ながら、
私が持っている一番大きいグラスに注いでも溢れ出て空間を満たしてしまいます。
そして口に含めば、それぞれの要素が一体になった透明感のある質感。
「果実をほおばったような味」がクラシカルないいブルネッロの表情だと思うのですが
それは若い時期だけですね、各要素がしっかり溶け込み混然一体となった、
今のタイミングではじめて「グランヴァン」といえましょう。
ただただ酸が美しいです。これこそブルネッロでしょう。
ただそれが柱というわけではなく、そこに柔らかさのある果実味が乗ってくるのは2007らしいところですね。
完全に一体になっていて、中々出会えない滑らかな質感です。
集中力があり輪郭もはっきりとした、エキス感のある「噛める液体」です。
タンニンも当然とても豊富で、飲み進めると積もっていくのですが
非常に質がいい、細かく熟した甘さのあるタンニンです。
のどを落ちた後も口の中や、体の中で力を感じる余韻の長さにワインの格をかんじます。
酸が美しいブドウといえばまずピノノワールが挙がると思いますが
ここまで太いものはありません。厚みと旨みが違います。
しっかり芯が通った透明感という意味ではジュブレイシャンベルタンに近いのかもしれません。
特に特有の旨みを感じる味わいは共通点を感じます。
ただ、たとえ同程度の熱量、エネルギーを凝縮した液体であっても
ブルゴーニュのワインが常に外へ外へと向かうのにたいし、
ビオンディ・サンティは静謐さを湛え、飽くまで自然体でそこにあります。
ずしりと重いようなわけでも、天に向かうような軽やかさを持つわけでもありません。
ただその存在感はしっかりと感じます。
2007はリリース直後にも飲んでいたのですがここまで熟成しているとは思いませんでした。
環境もあるのかもしれませんが、このボトルは早いですね。
私の感覚では、現状でひとつの完成段階にあるように思われます。
待っても古酒の領域に入りそうですので開けてもいいのかもしれません。
誠に。素晴らしいワインでした。