母や祖母に会うたびに
「昔はこんなに暑くなかった、30℃を超える日のほうが少なかった」
と聞かされます。
真偽のほどはわかりませんが、それでも、今現在暑いことは変わりません。
このような環境ですと、日差しを遮りつつも空気を通すゆったりとした服装が好ましいのですが、
お屋敷に使える身としてはそのような我儘をいうわけにも参りませんね。
武士は食わねど高楊枝、というわけではございませんが、夏といえどもきちっとしなければいけません。
というわけで私が夏に好むのはリネンの生地で仕立てられたスーツで
常夏の植民地で過ごすための「コロニアル」と呼ばれる様式です。
服飾だけではなくインテリアなどでも耳にするのではないでしょうか。
秋冬のカントリーな装いと並んで「旅」を感じさせるところが好きです。
手持ちでも特にアイリッシュリネンで仕立てられたものはお気に入りでして、350g/m以上という、
高機能素材が席巻する現代社会では考えられない程の重い生地が使われております。
当然疲れますし、日本の夏には全くもって適さないのですが、
非常に強いコシをもった生地には何度も袖を通すうちに深いシワが刻まれていきます。
しっかりアイロンをかけて新品のように!とビジネス的にしかスーツを使わない日本では馴染みづらい感覚ですが、シワを愛し何年もかけて自身の体になじませる過程はなかなかに愉しいものでございます。
さすがには猛暑日には無理せず楽な装いをと思いますが、できる限り涼しい顔で羽織りたいものでございますね。