執事達の休日2.5

少し前の出来事です。

ここは使用人寮、杉村の自室。
休日に五人の使用人が集まって、楽しくわいわいとスコーンを作り終えた後のことです。
杉村の自室ではオコタを中心に使用人達が集まって、反省会をしておりました。
黒崎、八幡、浅葱の三人がオコタに入って歓談をしております。部屋の主である杉村は、少し離れてキッチンにおりました。トントントン、とリズミカルな音が聞こえたり、グツグツと煮える音が聞こえてきて、部屋にはなんだか良い香りが漂っております。

浅葱「それにしても酷い目に遭いました。まあ、楽しかったですけど」
黒崎「八幡と杉村は許さない」
八幡「何かしましたっけ?」
黒崎「忘れないからな!」
浅葱「まあまあ、美味しいスコーンも出来ましたから前回より良かったんじゃないですか。それに口直しとして杉村さんが美味しい料理を振舞ってくれるじゃないですか。……ねぇ杉村さーん」
杉村「そろそろ出来るよー。浅葱、運ぶの手伝って!」
浅葱「はーい!」
トタトタ、と浅葱は駆けていきます。
八幡「たこ焼きに続いてスコーンと作ってきましたけど、次回は何を作りましょうか」
黒崎「八幡は全然懲りてないなあ。私はもう作りたくないよ。……ちなみに、八幡が次に作りたいものはあるの?」
八幡「たくさんありますよ。まずはお好み焼き編でしょう。後はパンケーキ編。そしてパスタ編とかもいいんじゃないですか」
黒崎「……どうせまたミンティア入れたりにんにく入れたりするんじゃないの?」
八幡「そんなことないですよ、黒崎くん」
黒崎「絶対そうじゃん!」
そんな二人の下へ料理を運んできた杉村と浅葱は、テーブルの上に次々と美味しそうなものを載せていきます。
杉村「お待たせ! 桐島さんのリクエストしてたハンバーガー、黒ちゃんのリクエストのお好み焼き。それから浅葱が駄々をこねたからナポリタンも作っておいてあげたよ。唐辛子とニンニクが大量にあったからアラビアータやペペロンチーノも作ってみたんだ。お酒のつまみとしてアヒージョも」
黒崎「す、すごい量ですね」
浅葱「ナポリタン~♪ ナポリタン~♪」
八幡「では早速頂きましょうか」
杉村「あれ? お腹が空いたって騒いでいた人がおりませんね」
黒崎「桐島さん? そういえばいないですね」
浅葱「そんなことよりナポリタンですよ!」
八幡「桐島さんには美味しかったと伝えときますから食べましょう」
杉村「そうですね、冷めちゃいますし」

四人「いっただきまー……」


バンッ! と、勢いよく扉が開く音がしました。

桐島「ちょっと待ちなさい!」
黒崎「き、桐島さん?」
桐島「違うわ! 桐島お嬢様とお呼びなさい!」
杉村「桐島、お嬢様?」
八幡「桐島さん、ついに気が触れたのですか?」
桐島「ノー!! アタクシは気づいたのです! お嬢様に気に入っていただけるような物を作るには、誰かがお嬢様役になるのが一番だってね! この五人で一番お嬢様なのはだ~れだと思う? ……アタクシだよ!!」
浅葱「た、確かに! 桐島さんから溢れ出るお嬢様のオーラ、高貴な出で立ち、ダイナミックボディ。ここにいるのは桐島さんではありません! 桐島お嬢様です!」
杉村「え、何これ……何か始まったけど」
黒崎「また訳のわからぬことを。八幡、ちょっとあの大きなお嬢様もどきを黙らせてくれませんか」
八幡「桐島さん......いえ、桐島お嬢様!それで私達は何をすれば良いのでしょう!」
杉村「八幡まで?!」
黒崎「駄目だ、この人達」

杉村「で?何をしてほしいの桐島さん」
桐島「お嬢様!(指 ポキポキ)」
杉村「っ....…お嬢、様。(まだ死にたくない)」
桐島「今回はみんなにアタクシの気にいる『キッシュ』を考えてもらうわ!題して、執事たちの休日2.5弾!キッシュパーティ~!! いぇーい!」
浅葱「いぇーい!」
八幡「キッシュですか、面白そうですね」
黒崎「そんな急に言われても……」
浅葱「はい! はいはいはい!」
桐島「はい、じゃあ最初は浅葱ね!」
浅葱「こほんっ……それでは桐島お嬢様。本日は私、浅葱が考案したキッシュをお持ち致しました」
桐島「用意がいいわね、浅葱。恐ろしい子!」
杉村「ノリノリですね……」
浅葱「こちら『浅葱』風キッシュでございます」
桐島「自分の名前を付けたのね。それで何が入ってるの?」
浅葱「文字通りアサリとネギを入れまして、そして浅葱色にする為にチョコミントをーー」
桐島「うん、却下よ!」
浅葱「そ、そんなぁ」
八幡「当たり前ですね」
桐島「次は誰かしら!」
杉村「では私、杉村が桐島お嬢様にキッシュをお持ち致しました」
黒崎「杉ちゃんも意外とノリノリだ……」
杉村「こちら『八幡』風キッシュでございます」
桐島「き、危険な予感しかしないわ」
八幡「美味しそうですね」
桐島「何が入ってるのかしら?」
杉村「黒ごまときな粉、そしてサクランボ」
桐島「ほう、和テイストでなかなか……」
杉村「そしてミンティアとニンニクでございます」
桐島「とんでもなかったわ! ダメよ、ダメダメ! 次は黒崎! 真面目な貴方なら美味しいキッシュを作れるでしょう」
黒崎「まあ真面目ではありますけど、なんか釈然としないのはなぜでしょう。まあいいです……こちら『日本』風キッシュでございます」
桐島「日本風? 和風なのかしら」
黒崎「左様でございます。日本人の魂でございますお米を使ったキッシュでございまして、炊きたてのご飯をギッシリとキッシュに詰め込んで焼き上げたものでございます」
桐島「んー確かに今までにない発想だけど」
八幡「味付けは?」
桐島「そうね味付けは大事」
黒崎「勿論、白米の美味しさを味わう為に……塩のみを使います!」
杉村「塩、だけ?」
黒崎「塩と米! それこそが究極であり、至高でございます!! 充分ではございませんかっ!」
浅葱「確かに美味しそうですけれど……」
桐島「残念だけれど却下よ。桐島お嬢様が満足するキッシュとしては物足りないわ」
黒崎「くそう! 梅干しをつけていればよかったのか!」
杉村「そういうことではないと思いますが」
桐島「嗚呼、なんということかしら。この桐島お嬢様を満足させるキッシュはないということなの!」
八幡「お待ちくださいませ。そう決めるのは些か尚早でございます。この八幡がおりますでしょう」
浅葱「一番不安なんですけれど……」
桐島「そうね。八幡、貴方はどんなキッシュを持ってきたのかしら?」
八幡「それでは……こちら『お屋敷』風キッシュでございます」
桐島「お屋敷? 何が入ってるのかしら」
八幡「こちらにはハンバーグにお好み焼き、ナポリタンをバランス良くお入れして、程よい唐辛子の辛味やほのかにニンニクのエッセンスを取り入れ、私達五人をイメージした素晴らしいキッシュです」
桐島「私達五人を、イメージした?」
八幡「はい」
桐島「素晴らしい、キッシュ……?」
八幡「左様でございます」

桐島お嬢様と八幡は見つめ合います。

八幡「桐島お嬢様、お召し上がり下さいませ」
桐島「八幡……」
八幡「桐島お嬢様……」
桐島「八幡……!」
八幡「桐島お嬢様……!」


トゥンク、トゥンク、トゥンク。


浅葱「……あのう、食べませんか?」
杉村「そうですね。悪ノリが過ぎました」
黒崎「ギフトショップのアホ二人は放っておきましょう。それじゃあ、」
三人「いただきまーす!!」



桐島「やはたぁ……!」
八幡「桐島さん、気持ち悪いです」
桐島「あ、はい」


ちゃんちゃん!



浅葱でございました。
Filed under: 浅葱 — 10:00