日誌 号外

「今月のアクアパッツァは本当においしいよね、杉村君なら作れるんじゃないの?」(この発言は過去のものです)

軽く口からこぼれた一言が私に本当に本当に幸せなひと時を与えてくれました。

普段から杉村の料理の話はよく聞いておりましたし、昨年同様バレンタインには皆にチョコレートをふるまってくれていたので腕に疑いはなかったのですが

実際にその料理を口にしてうなりました。

わかりやすくシンプルに伝えるならば……

白ワイン1本が瞬く間に空になりました!

お酒が好きな方ならもちろん。召し上がらない方でも紅茶に置き換えればわかりやすいかと存じます。

普段多く飲んでもハーフ程度、食事に合わせてもグラス1~2杯といった具合なのですが、それがもう進む進む!
魚介のうまみがワインと溶け合いそれぞれの味をより一層引き立たせ、それがまた次の一口への呼び水となる。

もう止まりませんね。

マリアージュという単語はよく使われますがここまでしっかり白ワインと溶け合う味わいはそうそうございません。
この一体感。酒飲みだからこそ作れる味でございましょう。

一方で酒に合う味というと分かりやすく濃い味にしがちなのですが、このバランス感覚もすばらしい。
私自身も素人なりに料理を作るのですが塩を決めるというのは本当に難しいです。
後戻りができませんし、若干濃く作るほうがわかりやすくおいしくなるのですが、杉村が用意してくれたアクアパッツァは決して効きすぎることがなく主張しすぎません。メインは飽くまで魚介の味。うまみと甘さがしっかり主張しております。杉村の料理教室に通いたくなりますね。

そしてまた、味もしっかりなじんでいて、時間をかけて作っているのがわかります。
材料に火を通しスープのバランスをとるだけですとそれぞれの要素がなじみませんし、塩も角がたちます。
それぞれの具材の風味、複雑さはありながらも全体としてしっかり溶けて一つになって丸い味わいでございます。

ご覧の通り多くの具材がございますが、どれを最後に食べようかどの順番で食べようか……最後に向かうにつれ迷って迷って仕方ありませんでした。
おいしいものを食べているとそうなりますね。

「筆舌に尽くしがたい」と伝えることを放棄したくなるのですが誠に伝えきれないおいしさでございました。

ただ、それ以上に嬉しかったのは杉村の優しさを端々に感じられたことでございましょう。
これだけ手の込んだ料理でございます、時間も手間もかかったことがわかることは勿論ですし。
何度も申し上げた通り、しっかり白ワインを意識した味づくりに食べる人(ワインが大好きな私)のことを考えて味を調えて作ってくれたのかなと感じられます。
作る前にもさりげなく「大河内さんは好き嫌いないんですか?」と聞いてくれていました。
料理の技術も勿論ながら、彼の人柄こそが最高のスパイスとして暖かい料理……というよりも全てを含めて暖かい気持ちになる時間を与えてくれたのだと思います。

作る人は食べる人のことを考えて、食べる人は作る人のことを考えながら。

職務的にも、食材、調理法、ソース、マリアージュ等々頭で考えることばかりで忘れておりましたが、そもそも「食」に大切なのはそこではないのだなと学べた気がいたします。
「食」「料理」の根幹とでも申しましょうか。今まで感じたことのない感動を食から得られた気がいたします。

杉村くんごちそうさまでした。

……

……

ちなみに。
スープもたっぷりとくれたので締めをパスタにすべきかリゾットにすべきか
本当に迷ったですが……

どちらにするかはこれから決めます!