ハロウィンお屋敷

浅葱でございます。

お嬢様にお使いしてあっという間に半年が過ぎてしまいました。春が過ぎ、夏が過ぎて、いまは秋でございます。お嬢様、肌寒くはございませんか? ご用命なら浅葱がモコモコの羽織をご用意致しましょう。
桐島「浅葱くん、それ私の!」
失礼致しました。桐島のモコモコでございましたね。

よく見渡してみると周りには魑魅魍魎が……。あれは紫色の……何なのでしょう? 星条旗であったり、アラブであったり、猫耳であったり。そこには不思議な世界が広がっております。
そう、お屋敷はハロウィン仕様になっているのでした。
私は中国妖怪のキョンシーになるために横浜中華街まで足を運び、そしてお化け屋敷水族館なる場所へ一人で勉強しに行った結果、おそろしいめに遭いました……。詳しいお話は是非ともティーサロンにて、お嬢様に披露しとうございます。

そしてもう一つお話したいことがありました。
ハロウィンパーティーの裏話でございます。


ハロウィンの準備をする休憩時間、アラブの石油王がワイングラスを傾けていたので「絵になるなあ」と眺めていますと、ニッコリと眩しい笑顔を浮かべました。
隈川「これは私が淹れたルビーですよ」
左様でございましたか……。
お嬢様に喜んでいただくべく使用人が各々考えた仮装はどれもクオリティが高く、そして一筋縄ではないくせ者揃いでした。

黒崎「あれ? 浅葱はイベント初めて?」
浅葱「はい! 頑張って仮装します!」
全身に黒い布を巻いた黒崎がキョロキョロと緊張している私を見つけて声を掛けてくれました。
浅葱「黒崎さんは……なんですか? それ」
黒崎「ミイラ男(ブラック)だよ」
浅葱「カッコいいですねー! ミイラ男」
黒崎「ミイラ男(ブラック)だよ」
浅葱「はあ(……何言ってんだろう)」

そんな黒崎(ブラック)でございますが、休憩時間ということで使用人達が食べていたスコーンを持っておりました。かぼちゃのスコーンでございます。美味しそうでございますね。かく言う私もカボチャのフィナンシェを一つ持っておりました。平安時代の格好という藤原より受け取ったものでございます。
藤原「おやつに一人一個ずつ配ってるんだ。はい、どうぞ!」
浅葱「ありがとうございます! このお菓子……いとをかし(興味深い)、ですね」
藤原「おかしな子だねー」
平安時代とお菓子をかけた渾身のコメントでございましたが、首を傾げられて受け流されてしまいました。いとをかし、滑稽だなという意味にも使えるという便利な言葉ですね。……マイブームになりそうな予感です。

黒崎「ハロウィンらしいことをしよう」
浅葱「唐突でございますね。しかしそういうところ、嫌いじゃありませんよ」
黒崎「使用人を驚かしてお菓子を頂戴するのです」
浅葱「トリックオアトリートならぬトリック(いたずら)もトリート(ごちそう)も、ということですね。さすが黒崎(ブラック)さん」
黒崎「……ばかにしてる?」
浅葱「いえいえ、リスペクトです」

そんなやりとりがあり、まずはターゲットに生駒を選びました。まるで浪人のような姿をしている彼に私と黒崎でお屋敷に伝わる怪談を披露した後、一人になるのを待って脅かす算段でした。
ガクガクと震えながら歩いてくる生駒。そこへ扉が開いておどろおどろしい包帯男がケタケタケタケタと笑い、そしてキョンシーの冷たい手が顔にひたり、追い打ちとしてキョンシーのお札が生駒の顔を撫でて右往左往。
そこですかさず「トリックオアトリート」と耳元で囁きました。
生駒「ひゃー!」
叫びながら逃げていく生駒は手に持っていたコウモリクッキーを置いていきました。
私と黒崎はにやりと笑っております。
それでは次のターゲットが来るので私と黒崎、そして生駒から頂いたお菓子をまとめて置いておきましょう。

それで味をしめた私達は続いてやってきた使用人に狙いを定めて仕掛けました。
扉が開いて包帯男がケタケタケタケタと笑います。
桐島「なにか面白いことあった? 黒崎くん」
黒崎「……黒崎(ブラック)です」
キョンシーの冷たい手が顔にひたり。
桐島「浅葱くん、冷え性?」
浅葱「……桐島さんのモコモコあったかいですね」
桐島「いいでしょー! あげないよ!」
諦めてはいけません。最後の仕掛け、キョンシーのお札攻撃を実行しようと私が気を引きつけている間に黒崎が背後に回りました。
桐島「ん?」
黒崎「ぐふっ!」
何かに気づいたように桐島が振り向くと、その大きな身体に黒崎は吹き飛ばされてしまいました。
浅葱「黒崎(ブラック)さ……ぐふっ!」
声によって振り向いた桐島によって私も吹き飛ばされてしまいました。
桐島「あれ? 二人ともいなくなっちゃった」
そこに残っていたのは桐島一人でした。
桐島「あっ、こんなところにたくさんお菓子がある! ちょうど一個じゃ足りないと思ってたんだー!」
私達のお菓子を両手に抱えて、もぐもぐもぐと幸せそうに頬張る桐島が去っていきました。

黒崎「よこどり、く(トリック)われた」
浅葱「これじゃあミイラになったミイラとり、いと(トリート)をかし」
黒崎「だからミイラ男(ブラック)だって」


お後がよろしいようで。
Filed under: 浅葱 — 23:00