浅葱の大好きなこと

4月になってようやく温かい日が続くようになり、春らしいと形容できる日々がやって参りましたね。

春が待ち遠しかった、浅葱でございます。

私の好きなことの一つに、散歩がございます。春の日長はお花見を兼ねて、夏の短夜には足を伸ばして海岸線に沿って、秋の夜長には月を見ながら、冬の日短は積もった新雪を踏みしめて。

同じ道であっても、まったく違う発見があります。

そして季節の楽しみにはスイーツが付き物でございますね。春の桜餅、夏のアイス、秋の月見団子、冬のおしるこ。ぜーんぶ大好きでございます。

「花より団子」という言葉がございますが、私の場合「花も団子も」といった感じでございましょうか。とても忙しゅうございます。

季節の楽しみといえばお酒とおっしゃる方も多ございますね。花見に一杯、花火に一杯、月見に一杯、温泉に浸かりながら雪見に一杯なんて最高ではございませんか。

けれども楽しんでばかりいると、舞い上がってついつい失敗してしまうのは気をつけねばなりません。

先日、私が桜の名所に花見へ行った際のこと。

お屋敷のティーカップ、スプリングブロッサムと良い勝負をしそうなほど美しく咲き誇る桜を見上げながら団子を頬張っていた私の前に、なにやら人集りがございました。花見客は三々五々に自分のスペースを作って宴会をしていたり、歩き回って楽しんでおりますので、人集りが出来ているのは珍しゅうございます。そこで私は興味惹かれて近づいたのでございます。

人集りの中心には若い男二人がおりまして、花見客に売ろうと大きな酒樽を持ってきて商売をしているようでございました。お酒に釣られたお客さんが集まっていたのでございますね。せっかくなので私も一杯……と思って更に近づきますと、なんと酒樽は空っぽでございまして、花見客は皆お酒が買えなくて残念そうでございました。

けれども当の若い男二人組は顔を真っ赤にして、足元がおぼつかない様子。酔っぱらっております。

諦めてお客さん達が散って行っても私はこの不思議な状況を解き明かす為、その場に居続けました。(自称)お屋敷探偵・浅葱の出番でございます。

すると男二人組は懐から勘定袋を取り出し、中から小銭を取り出しました。「そりゃあ500円しかないはずだ」と落胆しております。

そうして私は得心いたしました。

酒呑みはお酒がなくなれば必ず次のお酒を呑みたくなる。男二人は花見に便乗して儲けようと企み、お酒を一杯500円で売ろうとしました。全部が売れれば相当な儲けだったのでしょう。儲けが出れば改めて一杯やろうという、何のことはない飲み代稼ぎでございます。

さあ商売だ、という矢先、いざ満開の桜を目の前にして男の一人はお酒が飲みたくてしょうがなくなったのです。
そこで、お互いの商売物なのでタダでもらったら悪いからと、
「一杯売ってくれ」
と言いだして、500円払ってグビリグビリ。
それを見ていたもう一人も飲みたくなり、
やっぱり500円出してグイーッ。
俺ももう一杯、じゃあまた俺も、それ一杯、もう一杯とやっているうちに、三升の樽酒はきれいさっぱりなくなってしまいました。
二人はもうグデングデン。

そうこうしている内にお客が寄ってきて「感心だねえ。このごった返している中を酒を売りにくるとは。けれども、二人とも酔っぱらってるのはどうしたわけだろう」
「なーに、このくらいいい酒だというのを見せているのさ」

なにしろおもしろい趣向だから買ってみようということで、客が寄ってきます。ところが、肝心のお酒が樽を斜めにしようが、どうしようが、まるっきり空。

「いけねえ、酒は全部売り切れちまった」
「えー、お気の毒さま。またどうぞ」

またどうぞも何もないでしょう。客があきれて帰ってしまうと、まだ酔っぱらっている二人、売り上げの勘定をしようと、財布を樽の中にあけてみると、チャリーンと音がして500円玉が一枚。品物が三升売り切れて、売り上げが500円しかないというのは? 

「このあんぽんたん、考えてみれば当たり前だ。あすこでオレが一杯、ちょっと行っててめえが一杯。またあすこでオレが一杯買って、またあすこでてめえが一杯買った。500円の銭が行ったり来たりしているうちに、三升の酒をみんな二人でのんじまったんだ」

「あ、そうか。そりゃムダがねえや」


私の大好きなこと。

散歩、スイーツ、ミステリー、落語などなど。

一度に全ては大変忙しゅうございますね。
一つひとつゆっくりと楽しむことにいたしましょう。
日誌を書いていてそう思う浅葱でございました。
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