ハイクオリティを求めて

浅葱でございます。
お嬢様、本日は何の日かご存知でございますか?
8月19日は俳句の日でございます。
は(8)いく(19)。語呂合わせでござます。その理屈だとバイクの日でも良さそうな……。
では、夏の名句を一つ。

籠かばふ鬼灯市の宵の雨 水原秋桜子

浅草のほおずき市で雨に降られたワンシーン。宵の雨という言葉の選択が秀逸な一句でございます。
今日という一日、浅葱はせっかくの機会でございますし、俳句集などを読み耽ろうかと存じます。
それでは良い俳句ライフを!

浅葱




…………ん?
とんとん、と肩を叩かれました。
藤原「ちょっと浅葱くん」
浅葱「はい? どうかいたしましたか?」
藤原「今年は浅葱も俳句を作りなさい、って大旦那さまからの言伝があったよ」
浅葱「なんと!」

毎年、使用人のうち数人が俳句を作って披露するという伝統があることは知っておりました。知っておりましたが……まさか、私にそのような役目を任せられるなんて。
季節折々の一句を鑑賞するのは以前からの趣味でございましたが、俳句を作るとなりますと初めての経験でございます。
どうすればよいのやら。
ここは頼れる先輩にアドバイスを聞かねば!

八幡「それで私のもとに?」
浅葱「いや道中でたまたまーーた、頼れる先輩といえば八幡さんと思い至り!」
八幡「頼れる先輩こと八幡になんでも聞くといいよ」
浅葱「では俳句のことを!」
八幡「俳句? 私が知るわけないでしょう」
さすが頼れる先輩でございますね。
立ち去ろうとする私に八幡は一言だけ。
八幡「考えるな感じろ」
と、キメ顔で言っておりました。

黒崎「それで私のもとに?」
浅葱「え、ああ、その通り、ですよ?」
黒崎「頼れる先輩フットマンこと黒崎になんでも聞くといいよ!」
なにやらデジャブでございます。
浅葱「では俳句のことを!」
黒崎「君が思うことをそのまま表現すればいいんじゃないかな。浅葱は何をお嬢様に伝えたいんだい?」
浅葱「それは……」
黒崎「今、無理に答える必要はないさ。それより使用人食堂に食べにーー」
浅葱「行きましょう!」
本当は頼れる先輩こと伊織に相談しようかと思っておりましたが、黒崎がそこまで私と食事をしたいというのであれば致し方ありません! 奢りというのであれば致し方ありませんね!
黒崎「いや、そこまで言ってないけどね」

使用人食堂には平山、綾瀬、緑川がおりました。三人にも俳句について尋ねてみましょう。
平山「頑張って!」
さすが平山でございます。なんと爽やかな笑顔。
綾瀬「やっぱり夏がテーマだといいかもね。最近はまっている激辛料理とかは?」
それは綾瀬のことでございましょう。
緑川「ハイクオリティになるといいね、俳句だけに」
これが緑川クオリティでございます。

食堂の美味しいご飯でお腹一杯になった私達は、すっかり日が暮れた空を見上げながら帰路に着きました。
皆で飲み物を飲みながらゆっくりと歩き、時には庭園のベンチなどに腰掛けて、その日にあった嘘のような話、お嬢様に喜んで頂ける給仕について、そして何気無い、本当に何気無い話を語りながら。
浅葱「考えずに感じた、今お嬢様に伝えたい、そんな私の気持ち……」
夏の夜空の下、使用人仲間たちの笑顔を眺めながらふと呟いてみました。

こうして私の俳句は完成致しました。
上手く出来ているかは正直不安でございます。けれども今の私の気持ちは込められたかと存じます。
本来であればこの場で披露するべきでございましょうが、浅葱は少し恥ずかしゅうございます。
私の俳句はティーサロンにて、こっそりとお読み下さいませ。
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