ありがとうございます

10周年。僭越ではございますが私も日誌を一つ残しておこうかと存じます。
これも10年の積み重ねかと思うと苦笑いが浮かびますが、生来皮肉屋でございますので突然まじめな内容を綴ることに抵抗もございます。日ごろの自身の言動を反省しなければいけませんね。

さて、話を戻しましょう。
数年前まではこの「10」という数字はとても大きな意味を持って輝いておりました。しかしいざ目の前に致しますと不思議とその輝きは失われ実感も乏しくなってまいります。
昨年も認めましたが、やはり私にとっては日々の積み重ねの結果として今があるというだけだからなのかもしれません。

ここ数年とみに感じておりますが、我々使用人……と申しますか、私自身に課せられた仕事は、目の前のお嬢様にお仕えし、ティーサロンで過ごす時間をいかに幸せで輝いたものにして差し上げられるかだと考えております。
一昨年の日誌にはこう認めました。シンデレラに魔法をかけるフェアリーのようにと。
(……ここまでくると大言壮語でございましょうか。10年たってもまだまだ足りておりません。)

私の仕事は、紅茶と食事の組み合わせをおすすめすることでも、ワインをお選びすることでも、美味しいカクテルをお作りすることでも、10年後のお屋敷を考えることでもございません。それらは手段でしかなく、仕事の本質は「自身がお出迎えしたお嬢様を笑顔にすること」でございましょう。
そしてその毎日の繰り返しが10年でございました。