大河内でございます。
夏に特別な思い出を持っている日本人は多いのではないでしょうか?
長い夏休み。一ヶ月田舎で過ごしたのも、家族で旅行へ行ったのも、キャンプをしたのも海やプールで真っ黒になるまで泳いだのも。浴衣を着て花火を見に行ったのも。千円札を一枚握ってお祭りに行ったのも、全て夏ではございませんか?

そして、それを振り返るようになる今。
ふとした瞬間。肌で感じる日差しや風、響き続ける蝉の声、草や海の香り。
様々ものが一瞬で自分を少年時代へと誘ってくれるのだと気付きます。
しかし残酷なことに。宝石の様にキラキラと輝いた思い出は、蘇ってもその美しさを満足に披露することはなく去ってしまいます。
そして我に返ると、額に浮かぶ汗と空虚な気持ちだけが残ります。

晩夏。季節の変わり目はいつも様々な感情が交錯いたします。少し昔なら豊穣の秋への期待も膨らむ季節だったのでしょうが、農耕から離れ夏休みを軸として思い出を作ってきた現代人には寂しさが表に出てしまう季節なのではないでしょうか。
きっと思い出の数が増えれば増えるほどそうなのでしょう。

そんな夏をテーマにした楽曲は多くございますが、この「晩夏」をモチーフにしたのが重要無形文化財、所謂、人間国宝でもある山本邦山の作曲した「夏」でございます。
実際はアドリブをもとにした即興性の高い曲なのですが、そこからは晩夏がもつ寂寥感を強く感じられます。
拍ではなくフレーズと間という日本人らしい感覚でなければ生み出せない世界でしょう。
聴いていて元気になれるわけでもないですし、励まされるわけでも、胸が高鳴るわけでもありませんが。
からっぽになれる曲だとだと思います。
機会がございましたら聴いてみてください。

あとは。
眠れない夜に集中して聴けば、5分かからずに眠れます。